失敗だけは何としてでも避けたい大学受験。お子さまの合格のために、全力で応援し、サポートしたい、そのような気持ちでいっぱいの親御さんにとっては、さまざまな心配事との戦いがあることでしょう。お子さまが暢気であれば、ものすごく気を揉むでしょう。お子さまが何を目指したいのかが見えない時は、どのようにしてあげればよいか迷うこともあるでしょう。
親御さんの皆さんは、大なり小なりそのような葛藤の中におられます。けれども決して一人ではありません。この記事では、親御さんが持ちがちな悩みを取り上げ、その対策を共に共有してまいりましょう。

もし読者の皆さんの中に、その悩みを乗り越えられたという経験がございましたら、その方法などをコメントでいただければ幸いです。
【悩み01】お子さまが勉強しているのか、本当に受験に対して真剣に取り組んでいるのかわからない
お子さまが高校生になり、いよいよ大学受験を意識する時期になると、「ちゃんと勉強しているのかな?」と不安になる親御さんは少なくありません。リビングでスマホを触っている姿、部屋にこもって何をしているのかわからない様子を見ると、「本当に受験生なの?」と心配になることもあるでしょう。
そんな不安を抱える親御さんに向けて、お子さまが秘めているかもしれない「真剣さ」を見つけるヒントと、安心して見守るためのアドバイスをお伝えします。
「勉強しているように見えない」の裏側にある、お子さまの姿とは?
お子さまが「勉強しているように見えない」と感じるのには、いくつかの理由が考えられます。
- 集中力の切り替え: ずっと机に向かうのが得意ではないお子さまもいます。スマホを触ったり、休憩を挟んだりすることで、集中力を回復させているのかもしれません。短い時間でも、効率よく集中して学習している可能性があります。
- 「見えない努力」: 自分の勉強方法を親御さんに見せるのが苦手なタイプのお子さまもいます。深夜まで起きて勉強していたり、朝早く起きていたり。また、教科書や参考書を開いていなくても、頭の中で問題を解くシミュレーションをしていることもあります。
- 息抜きの重要性: 受験勉強は長丁場です。適度な息抜きは、精神的な健康を保つために非常に重要です。スマホやゲームも、お子さまにとっては大切なリフレッシュの時間かもしれません。
一見、だらけているように見えても、それは受験というプレッシャーから自分を守るための、彼らなりの戦略である可能性も高いのです。
親御さんにできること:3つのステップで不安を希望に変える
では、親御さんはどのように接すればいいのでしょうか? 3つのステップで考えてみましょう。
ステップ1:信頼のメッセージを伝える
不安な気持ちから、「勉強しなさい」と口を出したくなる気持ちはよくわかります。しかし、その言葉はお子さまを追い詰めてしまうかもしれません。まずは「あなたはきっと大丈夫」という信頼のメッセージを伝えてみましょう。
「何か困っていることはない?」 「疲れてない?無理しなくていいからね」
など、心配していることや、いつでも話を聞く姿勢を示すことが大切です。プレッシャーを感じさせない声かけが、お子さまの心の支えになります。
ステップ2:具体的な努力を褒める
「勉強してる?」と聞くのではなく、お子さまが頑張っている具体的な行動に焦点を当ててみましょう。
「朝、早起きして頑張ってたね」 「いつもよりも早く帰ってきたみたいだね、えらいね」 「この前買った参考書、もうこんなに書き込んでるんだね」
こうした声かけは、お子さまの自己肯定感を高め、「もっと頑張ろう」という前向きな気持ちを引き出してくれます。
ステップ3:情報提供のサポーターになる
お子さまが真剣に取り組んでいる場合でも、大学の情報を一人で集めるのは大変です。親御さんが「情報提供のサポーター」として活躍できます。
「〇〇大学のオープンキャンパス、オンラインでやってるみたいだよ」 「共通テストの出願、もうすぐみたいだけど、大丈夫そう?」
親御さんが最新の情報をさりげなく伝えることで、お子さまは「親は自分を応援してくれている」と感じ、安心して自分の勉強に集中できます。
アンケート結果から見る「受験生と親」の関係性
ある調査でも、この「見守り」の姿勢の重要性が示されています。
「保護者にサポートしてもらってよかったこと」の質問に対し、多くの受験生が「精神的なサポート」を挙げています。具体的な項目としては、「いつでも話を聞いてくれた」「いつも通りに接してくれた」「体調を気遣ってくれた」などが上位を占めました。 (出典:株式会社マクロミル「大学受験生を対象とした調査」2021年実施)
この結果からもわかるように、お子さまが本当に求めているのは、過度な干渉ではなく、精神的な安心感と信頼です。
【悩み02】成績が思うように上がらず、このままで志望校に合格できるか不安
大学受験は、お子さまの成長を見守る親御さんにとって、多くの喜びとともに、尽きない不安ももたらします。特に「成績が思うように上がらない」という悩みは、多くの方が抱えていることでしょう。今回は、その不安を希望に変えるための具体的なアドバイスを3つのステップでお伝えします。
ステップ1:現状の正しい把握から始めましょう
成績が伸び悩んでいると感じる時、まず大切なのは「なぜ成績が上がらないのか」を客観的に見つめ直すことです。
- 量をこなしているか?
学校の宿題や塾の課題だけでなく、本当に必要な学習時間を確保できているか確認しましょう。 - 質を意識しているか?
ただ時間をかけるだけでなく、理解が浅いまま先に進んでいないか? 基礎の抜けがないか? をチェックしましょう。 - 学習方法が合っているか?
集団授業、個別指導、独学など、お子さまの性格や理解度に合った学習スタイルを見つけましょう。 - 目標は明確か?
志望校合格という大きな目標だけでなく、「今週は数学のこの単元を完璧にする」といった小さな目標設定ができているか確認しましょう。
これらの現状把握は、お子さまとの対話を通じて一緒に行うのが理想的です。一方的に問い詰めるのではなく、「最近、勉強していて、どんなことに困ってる?」など、お子さまの気持ちに寄り添いながら聞いてみましょう。
ステップ2:短期的な成果に一喜一憂しない
模試の結果が悪かった時、親御さんがお子さま以上に落ち込んでしまうことがあるかもしれません。しかし、短期的な成績の変動に過度に反応する必要はありません。
大学受験は長期戦です。 模試はあくまで「現状の把握」のためのツールであり、その結果が最終的な合否を決めるわけではありません。 もし、お子さまが結果に落ち込んでいるようであれば、「模試で弱点が見つかって良かったね。この部分を克服すれば、次はもっと伸びるよ!」といった前向きな声かけをしてあげてください。お子さまが安心して次のステップに進めるよう、精神的な支えになってあげることが最も重要です。



近年、私が高校生の家庭教師をして感じていることがあります。
進学校と呼ばれる高校の生徒でも、最近の授業の進度(進むスピード)が速くなく、3年生の1学期・2学期でも、共通テストなどで必要な科目の授業が行われることは少なくありません。中には「入試まで授業内容が終わるのだろうか?」と心配するお子さまもいます。
そうなると、授業で習いたての内容の応用問題が模試で出題され、まだお子さまが定着していない中で苦戦を強いられるという場合が増えました。
親御さんも、もし余裕がありましたら、授業の進み具合やそれに伴うお子さまの「困ったこと」を引き出してみてはいかがでしょうか?
ステップ3:親の役割は「伴走者」であると心得て
受験生の親は「コーチ」ではなく「伴走者」です。お子さまの横を並んで走り、時には給水係として、時には励ましの言葉をかけながら、ゴールまで一緒に進んでいくイメージです。
具体的な伴走方法の例
- 「ありがとう」を伝える
- 「毎日勉強、頑張ってくれてありがとう」
- 「いつも家事を手伝ってくれてありがとう」
- お子さまが頑張っていること、当たり前に思えることにも感謝の気持ちを伝えることで、お子さまは「見守られている」と感じ、安心して勉強に集中できます。
- 睡眠や栄養管理をサポートする
- バランスの取れた食事、規則正しい生活リズムの維持は、学力向上に不可欠です。
- 情報収集を手伝う
- お子さまが勉強に集中できるよう、志望校の入試情報や出願スケジュールなどを一緒に調べてあげましょう。



ただし、親御さんの時代の大学受験の感覚で話をすると、話がずれてしまう可能性がありますので、注意してください!
親子の関係がギクシャクしてしまう原因として、「勉強しなさい!」という命令形の言葉が挙げられます。親御さんの不安な気持ちから出る言葉ですが、お子さまにとってはプレッシャーにしかなりません。



お子さまに「勉強しろ」と言うのは、お父さんに「もっと給料を増やすように働け」お母さんに「もっと料理をうまく作れ」と言ってるのと同じかも…



まあ、それは言いすぎだと思うけどな
あるアンケート調査では、大学受験において「親にしてほしかったサポート」として最も多かったのが、「精神的な支え」という回答でした。 (出典:大学受験応援サイト「大学受験パスナビ」, 「受験生の親のホンネ・してくれたこと、してほしかったこと」, 2024年)
【悩み03】志望校が決まらず、将来何をしたいのか見えないのが心配
「うちの子、なかなか志望校が決まらなくて……」
大学受験を控えたお子さまを持つ親御さんにとって、これは多くの方が抱える共通の悩みです。お子さまが将来何をしたいのか見えないと、親御さんも「このままで大丈夫だろうか」と不安になりますよね。しかし、焦る必要はありません。お子さまの進路は、親子で一緒に考えていく大切な時間です。この記事では、お子さまの将来への視野を広げ、志望校選びをサポートするための4つのアドバイスをお伝えします。
なぜ志望校が決められないのか?
まず、お子さまが志望校を決められない背景には、いくつかの理由があります。
- 将来のビジョンがまだぼんやりしている 「大学で何を学びたいか」「将来どんな仕事に就きたいか」といった具体的なイメージがまだ持てていないケースです。これは決して珍しいことではありません。高校生のうちから明確な目標を持っているお子さまの方が少ないかもしれません。
- 情報過多による選択肢の多さ インターネットで多くの情報が手に入る現代では、かえって選択肢が多すぎて、何から調べればいいか分からなくなってしまうことがあります。
- 失敗したくないというプレッシャー 大学選びは将来を左右する大きな決断です。「間違った選択をして後悔したくない」という思いが、一歩踏み出すことをためらわせる原因になることもあります。
これらの悩みを解決するために、親御さんができることを一つずつ見ていきましょう。
親御さんができる4つのサポート
1. 「なぜ学びたいか」を一緒に考える時間をつくる
志望校選びの第一歩は、「何になりたいか」ではなく、「なぜ学びたいか」を一緒に考えることです。お子さまがどんなことに興味があるのか、どんな話に目を輝かせているのか、日々の会話の中でヒントを見つけてみましょう。
- 好きなことや趣味(アニメ、ゲーム、スポーツなど)
- 得意な教科
- 社会で起きている出来事への関心
たとえば、お子さまが歴史が好きなら「どうして好きなの?」と聞いてみる。「ゲームが好き」なら、「どんな仕組みで動いているのかな?」「キャラクターデザインに興味があるの?」など、少し掘り下げてみましょう。お子さま自身も気づいていない、学びのきっかけが見つかるかもしれません。
2. オープンキャンパスや大学の情報を「親子で」調べる
オンラインの大学説明会やバーチャルオープンキャンパス、SNSなど、今は大学の情報が手軽に手に入ります。親御さんも一緒に、お子さまが興味を持ちそうな大学の情報を調べてみましょう。
- 大学の学部・学科を調べる 「文学部」や「法学部」だけでなく、最近は「国際教養学部」や「データサイエンス学部」など、新しい学部も増えています。お子さまの興味と関連する意外な学部が見つかるかもしれません。
- オープンキャンパスに一緒に行く 実際に大学の雰囲気に触れることで、イメージが具体的になります。足を運んだ大学が「しっくりくる」と感じることも多いようです。
3. 「将来の仕事」について、具体的なイメージを持たせる
志望校が「将来の仕事」に直結するとは限りませんが、将来の職業を考えることは、学ぶモチベーションにつながります。
- 身近な大人に話を聞く機会をつくる 親戚や親御さんの友人など、様々な職種の人に話を聞く機会をつくってみましょう。実際に働いている人の生の声は、お子さまにとって大きな刺激になります。
- 職業体験やインターンシップを調べてみる 高校生向けの職業体験プログラムも増えています。実際にその仕事に触れることで、自分に合っているか、どんなスキルが必要かなど、よりリアルに感じることができます。
4. 悩んでいる姿を「応援しているよ」と伝える
一番大切なのは、お子さまが悩んでいることを否定せず、「一人で悩まなくていいんだよ」「一緒に考えよう」というメッセージを伝えることです。
- 「なんでも話していいんだよ」という安心感を与える 「志望校を決めないと」というプレッシャーから、お子さまは親御さんに相談しづらくなっているかもしれません。まずは「いつでも話を聞く準備がある」という姿勢を見せることが大切です。
- お子さまの決断を尊重する 最終的に大学を決めるのは、お子さま自身です。親御さんの意見を押し付けず、お子さまが自分で決めた道なら「応援するよ」と背中を押してあげてください。
まとめ
お子さまの大学入試が上手くいってほしいあまり、また、現実が親御さんの理想とかけ離れていたりすると、親御さんとしても焦りが出るでしょう。その空気をお子さまは感じ取ってしまうこともあります。そうなると、お子さまの学習についてのパフォーマンスは大きく落ちてしまいます。
つねにお子さまと一緒に歩みをしている、それをお子さまに伝えながら、孤立感を取り除き、安心感を持てるよう、自然な形でお子さまをサポートしましょう。



親御さんが持たれる不安や悩みはまだまだあると思います。この悩み解決の記事は、これからもシリーズ化してまいります。
親御さんの中で、「今○○に悩んでいる」「○〇のときはどうすればいい?」といった日々の疑問をお寄せくだされば、それを取り上げさせていただきたいと思います。お気軽に書き込みください!
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