「うちの子は真面目に勉強しているのに、成績が下がってしまった…」
多くの親御さんが経験するこの悩みは、決して他人事ではありません。また、親御さんとしては、「お子さまは学習に真面目に取り組んでいるのになぜ?」という疑問をもたざるを得ません。このことはお子さまの大きなモチベーションの低下も招きます。
ただ、真面目に努力しているにもかかわらず成績が下がる原因は、実は様々考えられます。この記事では、真面目に学習に取り組んでいるにもかかわらず、成績が下がってしまう理由とその対処法について紹介します。
成績下落の意外な落とし穴
お子さまの成績が下がったことにはいくつかの理由がありますし、いくつかの要因が複雑に関連している場合もあります。ここでは、代表的な原因を挙げていきます。
学習法に問題がある
お子さま本人はいたって真面目に取り組んでいるとはいえ、その方法が効果的でないというケースが考えられます。たとえば次のような場合です。
- 学習内容の理解をすることが及ばず、暗記任せにしてしまっている
- ただ宿題や課題をこなすことに追われていて、自分自身に落とし込めていない
- 得意な教科と苦手な教科との学習のバランスが悪い
- 単純に圧倒的に学習量あるいは学習時間が少ない
本人の中ではがんばってやっているつもりなんだろうね
理論がわからなければ無理やり暗記というやり方だと、長期記憶できないからね。試験では一夜漬けをせざるを得ない苦しさがあるね
精神面で問題を抱えている
心配事や悩みがあれば、学習に打ち込むことができず、効率がかなり悪くなり、成績低下が起こりやすくなります。たとえば次のような場合があります。
- 勉強に対する自信を無くしており、学習への意欲が低下した
- 集中力をもつことができず、勉強に集中できなくなった
- ストレスのためか体調が悪くなりがちで、学習時間を確保できなくなった
極端な場合、いじめに遭っているということもあるようです
親御さんはお子さまがどのような状態かも注意して観察しましょう
環境が変わった
安定した状況であれば、人間は落ち着けますが、自分の周りの環境が変わると、それに適応しなければならず、物事に集中できなくなります。その例は次のとおりです。
- 学習する単元が新しくなった途端にわからなくなった
- クラス替えなど、新しい環境になったものの馴染めず、ストレスを感じるようになった
- 友人関係が急激に変化し、勉強が手につかなくなった
いい意味で変化があれば、逆に加速するんだろうけど、うまくいかないこともあるよね
学年が変わるときや、お子さまの様子が変わった時は特に、ぜひ声をかけてみましょう
お子さまに潜む問題
お子さまが真面目であるなら、それ自体は素晴らしいことです。親御さんも目をかけて育ててこられたことでしょう。ただ、学習をする上で、その真面目さが仇になってしまうこともあります。その例を紹介します。
従順すぎる
聞き分けがよく、周りの状況をよく見ることができ、それにうまく合わせられるお子さまをときどき目にします。その子を叱る要素はないのです。おそらく人から注意された経験はすごく少なかったでしょうし、親御さん自身もそのようなお子さまを叱った経験は数える程度なのではないでしょうか。
ただ、お子さまは人との衝突を避ける傾向ができ、自分が考えていることが異なっても異を唱えることなく、周りに流されてしまう面もあるかもしれません。そうして主体性を欠いてしまうケースがあります。
自分から考え、独自の行動を起こすことが苦手であるお子さまとなり、言われたら動くという「指示待ち」型の性格となることが多いでしょう。自分の学習に対しても、自分を客観的に見て、今何が必要かを洞察し、やり方を工夫するといった積極的な取り組みや意欲がなかなか見られないお子さまが多い傾向にあります。このようなタイプのお子さまは、物事を突き詰める経験が少なく、学習量が少なくなりがちです。
失敗を恐れる
誰もが失敗は恐れるものです。失敗すれば自分が否定されたような気がしたり、恥ずかしい思いをしたりするからです。確かに受験では失敗はしないに越したことはありませんが、受験勉強や通常の学習においては、たくさん失敗しておいた方がいいのです。失敗をすることはマイナスではなく、「そうしてはいけなかったんだ」という学びの機会でもあります。それは失敗をした人しか体験ができないことです。学習においては、失敗をしないことよりも、多くの失敗からその分の学びを積んだ人の方がはるかに深い学習ができているはずです。
親御さんの立場としては、お子さまに失敗をできる余裕を作ってあげて欲しいです。お子さまの失敗を責めたりなじったりしてはなりません。それはせっかくのお子さまの学びの機会の芽を摘んでしまいます。
私はよく自転車に例えます。幼い時に自転車に乗ろうとするとき、最初は補助輪付きで乗っていて、その間は転ばないのですが、それをやがて外して乗らなければならない時期がやって来ます。途端に自転車のバランスは悪くなり、転んでしまうことも多くなります。そのたびにけがをしたり、痛い思いをします。それが嫌でも乗れるようになりたいと努力をした人は、いつか自転車を乗り回すことができるようになります。もし痛いのが嫌で自転車に挑戦することをやめれば、二度と自転車に乗れなくなるでしょう。また、自転車に乗る習慣がなく大人になった人が自転車に挑戦しても、乗れるようになるまで苦戦するということも聞きます。
お子さまの学習に対し、早い段階で失敗をし、その道のやり方を理解する道筋を親御さんは用意しましょう。
問題の本質がわかっていない
よく解き方がわからないから質問に行くというお子さまがおられます。その姿勢自体はすばらしいのですが、
「答えは何ですか?」
「わからないところがわかりません」
と開口一番に言って来るお子さまがおられます。
高校の内容は、「答えがどうか」よりも、「どう考えて正解にたどり着くか」が重要です。学習内容は思考法が重要視されるのです。
ですから、本質を分かっているお子さまが質問に来るときは、
「○○のところまで解いてみて、そこまでは良いようなのですが、この先の計算法がわかりません」
「◯◯までは理解できましたが、この先の○○がどうしてそうなのか教えてください」
という聞き方をします。
また、正解することにとらわれて、内容を暗記してしのごうとするお子さまも多くおられます。それは勉強の本質から外れているやり方です。「なぜ○○なのか?」という問いの目をもって学習する時に、その理屈がわかるものです。
アウトプットしない
学習にはインプットとアウトプットとがあります。インプットとは自分の頭に内容を取り込む作業で、たとえば「読む」「聞く」「見る」という作業が中心です。それに対してアウトプットとは、学習した内容を表に出してみるという作業で、たとえば「声に出す」「書く」といったものです。
よく、「学習内容が本当にわかっている人は、その内容を人に教えられる」といわれています。教えるという行動はまさしくアウトプットの筆頭なのです。
学力をつけるには、アウトプットがどれだけできるかによります。それは、アウトプットを行えば、記憶に鮮明に刻み込めるからです。ときには自分でまとめ直したり、構成したりする作業も、アウトプットの作業内に行うこととなります。ただ書かれている内容を目で追うだけのやり方とは効果も異なるでしょう。
ただ、インプットの良いところは、時間をあまりかけずに済むということです。ですからたとえばかなり得意な教科の場合、読んだだけで頭に入るという人がいると思いますが、そのケースはインプットだけでも成り立つでしょう。
ほとんどの人は新しく学習する内容を処理していくことが前提であるため、アウトプットを積極的に取り入れて、内容を深めていくことをおすすめします。
完璧主義である
真面目なタイプのお子さまは、「きちんとわからなければ先へ進まない」病にかかっているケースが多いです。
私が現在家庭教師をしている高校2年生の女の子を初めて見た日のことです。彼女は数学が苦手ということで、まず開始5分で彼女の数学のノートを見せてもらいました。すごく丁寧な字できれいにまとめられたノート。そこで私はピンと来たのです。そこで彼女にひとこと。
数学は、諦める力が必要だよ
彼女は案の定、ポカ~ンとしていました。
その後、私は「諦める」ことの説明を次のようにしました。
数学の問題を解いていて、理解不可能な所に出くわす時がある。そこで君は「どうしてこうなるのかな~」ってはまり込んで、時間を使ってしまうことってあるね?でも結局その先はモヤモヤしてよくわからないってなる。
「諦める」ことも重要なんだ。「諦める」という言葉は仏教用語で、もともとは「(道を)明らかにする」から来ている。わからないことにぶつかった時、わからないということを受け入れて、とりあえずそれは横に置いておく。これはそういうものだと思って、先を進んでいく。そしたらとりあえず正解は出せるようになる。それを繰り返して、十分にできるようになってから戻って、つまずいたところを理解しようとすれば、案外腑に落ちたりするものだ。わからないこととできることをはっきり、明らかにすることが、成績向上につながる。
私、クリスチャンですけど、こんな話をしました。
この話を聞いた彼女は、パアッと明るい表情になり、その後「彼女が私にもった感想」として、「勉強についての考え方を教えてもらって良かった」という報告を母親から受けたと同時に、時間延長のお願いが来たのでした。ちなみに彼女が公立の進学校の学年1位の生徒であることは、後で知ることになります。
もうひとつ例を挙げますが、今日本人の多くの方は、車を運転できます。その中の大多数は、車が動くメカニズムを詳細に知らないでしょう。なのに車を運転できます。車が動く詳細な理論は知らなくとも、経験的に「このように操作をすれば車って動いてくれる」と知っているからです。それで私たちの必要は満たされています。「○○はこういうものだ」「○○はこうするものだ」ということを知っていることをまず目指しましょう。車の運転に関しても、その経験を積んでから、車に疑問や関心があれば、その仕組みを学んでも遅くはないでしょう。
親御さんができるサポート
真面目なお子さまは素晴らしいのですが、もし性格的なことで学習の展開の上で支障が生じた場合、親御さんとしてはどのようなことができるのかを次に紹介します。
お子さまと一緒に原因を見つける
やはり問題が生じれば、一刻でも早く解決をしなければなりません。受験には時間的に限りはありますし、解決が遅れるほど学習内容への理解は改善されません。さらに解決しなければ、お子さまの心理的なストレスはなくならないでしょう。
原因を見つけるためには、お子さまとよく話をしてみることです。そして問題の根源を絞っていきます。
その際、お子さまを責めたり非難したりすることがあってはなりません。また、詰問するような聞き方は、お子さまがかえって本心を明かさなくなる原因にもなります。前に説明をした様々な原因の例を当たってみて、どこにお子さまが問題を抱えているかを明確にしましょう。
もちろん解決のためには、親御さんができれば親御さんが関わるといいです。けれども親御さんに自信がなかったり、問題が重そうであれば、その道のプロに任せましょう。
- 学習面⇒学校の先生や塾の講師に相談し、最善のアドバイスをいただく
- 精神面⇒担任の先生やスクールカウンセラー、場合によっては臨床検査技師に相談する
- 環境面⇒本人とじっくり話をし、問題点とその解決を本人に考えさせながら決めていく
家庭学習の習慣化をめざす
家での学習に問題があれば、それが正しい形で習慣化できるようにしましょう。次のような点に気をつけてみてはいかがでしょうか。
- 学習を始める時間をきちんと約束して決める
- 計画的に学習を展開させる
- 復習を確実に行わせる
- 家庭内での学習環境を整えてあげる
まとめ
真面目な子は黙々と取り組んでくれますが、時にはそうであっても学習に効果が出ないことがあります。「真面目に取り組んだのに」とお子さまが虚無感に襲われないように、それを解決し克服する必要があるでしょう。それには親御さんの存在は必要です。
お子さまの成績が下がった場合、さまざまな理由が考えられます。普段からお子さまと会話をし、お子さまの現在の様子をいつも感じられる状態を保ちましょう。そして何か変化が起きた時に、素早く対処できるようにしましょう。ちょっとしたことで不安になりがちなお子さまのために、共に歩んでまいりましょう。
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