大学入試を目指すお子さんはどのような勉強をさせるのがベストか?
この質問は、結構多くの場所で聞かれます。
私も家庭教師先で、どうすれば学力がつくのか、親御さんから質問を受けることが多いのです。
もちろんそのときは、お子さんの勉強の癖や気になる方法、思考パターンなどを指摘して、個々レベルでいえる課題を話すので、生徒によってその答えは異なるのですが…
ただ、大学入試全般に関して、ほぼ全員が気をつけておくべきことを1つ取り上げます。
お子さまの受験勉強が、果たして今のままでいいのか不安だという親御さん、お子さまに効果的に受験勉強を進めてほしいと思われる親御さんは、ぜひこの記事を読んでいただき、お子さまに伝えてもらえればと思います。
入試で必要な要素が、親御さんの頃のそれと異なる
お子さまが大学入試に向かっている姿をご覧になられて、ご自分の学生時代を思い出されている親御さんも少なくないと思います。
とくに親御さんの学生時代は、受験戦争が激しかった時代だったという方も多いのではと思います。
血を血で洗う、凄まじい時代だったんだね
いや、受験戦争ってそういうことじゃないぞ
受験生の人数自体は年々増えているのですが、最近は必ずしも「共通テスト=国公立大学」ではないため、いわゆる「受験熱」は昔ほどは熱くなくなっているのではないでしょうか?
かつて親御さんの世代の受験生は皆暗記に継ぐ暗記を繰り返していたわけです。
けれども、最近の共通テストで出題される内容が、どうもそうではなくなっています。
現在の入試は思考力重視
現在の入試で求められている力は読解力・思考力・表現力です。
問題文の多いこと多いこと。
たとえば数学でも問題に関わりそうな会話文が盛りだくさんで、普段から文字に親しんでいなければ、理系でもどうなるかわかりません。
また、問題が暗記できているかという知識面ではなく、理由や背景、流れといったものをとらえきれるかという側面の理解が必要になってきました。
最近の問題がニュース記事に
Yahoo!ニュースの記事より
Yahoo!ニュースの記事「東大生が出題!「思考力」をぐんと高めるクイズ 入試問題は「ただ暗記したら解ける」内容から変化」より紹介します。
■麻布中学や東大で出題された問題
昨今の中学入試・高校入試・大学入試は、昔と大きく変わってきています。
社会の問題を例に紹介すると、昔は、「大豆の生産量世界一の国はどこか答えなさい」「ペリーが来航したのは何年か答えなさい」といったように、データや歴史的事実を覚えれば解けるような問題が多く出題されていました。
しかし昨今では「大豆の生産量世界一の国はブラジルですが、それは一体どうしてなのか、ブラジルの国土に触れて答えなさい」といったように、「なぜそうなっているのか」という背景事情を問う問題が増えています。
これは共通テストではあくまでもマーク試験であるため、完璧な筆記試験は無理ですので、大学入試ではその昔2次試験と呼ばれていた各大学の個別試験が該当するでしょう。
それなら物事の因果関係などを問う問題は、昔から出題されていましたので、いきなり入試がそうなってしまったと思わないでください。
そして「なぜ?」の問題
ニュース記事は次のように続きます。
また、2022年度の東京大学の入試では「ブルーベリーの収穫量第1位は東京都である。東京都でブルーベリーの栽培が盛んな理由を1行で説明せよ」という問題も出題されました。
これらも「データそのもの」ではなく、「なぜそういうデータが出ているのか」を問う問題であり、データだけを覚えても答えを導き出すことはできません。
「覚えれば解ける」入試問題から、「覚えていても、考えなければ解けない」入試問題へと変化してきているのです。
皆さんはお分かりになりますか?
最近目がよく見えなくなってきている人が多いから?
みらい君、帰っていいよ~
さらに、この記事を書かれた、『アカデミックマインド育成講座』を監修した東大カルペ・ディエムの西岡壱誠氏が、自らの授業で紹介した問題を、次に取り上げています。
■中国が大豆の輸入量世界一なのはなぜ?
まずは、こちらの問題をご覧ください。
「2022年のデータを見ると、大豆の輸入量世界一は中国になっており、これは輸入量全体の59.4%となっている。なぜ中国が輸入量世界一なのか、答えなさい」
なんと世界で貿易されている大豆の約6割を、中国が消費しているのです。これはなぜか考えなさい、という問題ですね。
他のデータも見てみると、中国は世界で4番目に大豆の生産量が多い国でありながら、ブラジルやアルゼンチンから莫大な量の大豆を輸入しています。
「うーん、中国人が大豆を好んで食べるのかな。でも、中華料理に大豆を使った料理ってどんなのがあったかな」
と考えてしまうと、この問題は答えられません。思考力を問う問題が解けるようになるためには、そもそも、「事実」と「解釈」をしっかりと分けて考える必要があります。
この問題の答えはわかりましたか?
ぶっちゃけ、普通だと「そんなこと知らねーよ」となります。
ちなみにこのブログの主は
5秒で正解を導きました
ただ、この記事、問題文のどこにも「消費」という言葉が使われていないのに話を展開しているので、その辺は察しながら読んでください。
では、記事の続きです。
この問題で問われているのは、「中国人はなぜ、大豆を多く消費するのか」ということです。では、「消費」とはなんでしょうか? この問題を解くためには、「消費」という言葉の定義がカギになります。
「消費」という言葉には、いろんな解釈が考えられます。もちろん人間が食べるのも「消費」ですが、何か工業に使うのも「消費」ですし、人間以外の動物が食べるのも「消費」です。「人間が食べる以外の方法で、消費しているとしたら、どんな方法だろうか」と考えていくと、答えが見えてきます。
正解は、主に「飼料用として、家畜に食べさせている」からです。中国では、豚肉が好んで食べられています。中華料理でも、大豆はぱっと思いつきませんが、豚肉を使った料理は多いですよね。
そして、その豚を育てるための餌「飼料」として、大豆の需要が増えているのです。国内の生産だけでは足りない分を輸入して、豚に消費させているというわけですね。
「思考力を問う問題は、訓練をしても解けるようにならない」と考えている人も多いかもしれません。
実際、「思考力を身に付ける」と言われると、どんなふうに身に付ければいいのか分からなくなってしまいますよね。
でも「事実と解釈を分けて考える」「言葉の定義をしっかりと考えて問題に取り組む」などの、「技術」を身に付けると、思考力を一段と高めることができます。
要は問題の読み取り方という技術にこだわるということでしょうかね。
この記事に対するネットでの意見
私はむしろネットでの読者の意見の方が参考になりました。
一部紹介します。
う〜ん、
なんだろう。これって思考力を問う問題なの?
飼料として使うから、なんて知ってるかどうかじゃん。
飼料に大豆を使うことがある、ということを知ってる前提で、じゃあその知識と繋げられるかが思考力なんだ、と言われてもイマイチなるほど感無いよね。
結局、これが正解ですってのがある時点で知識問題だと思う。
私が思うに、「思考力」を問う問題として成立するのは、教科書の内容を飛び出していることが前提なような気がします。なぜなら、現在の授業において、入試問題は「履修内容からの出題が基本」となっているからです。
だから授業の内容は「暗記」するのです。
そして「気の利いた」授業のときには、教科書にはないけれども、知っておくと良い内容や、問題集の発展の内容、模擬試験で取り扱われてもおかしくなさそうな内容を授業て取り上げ、「とりあえず覚えておいてね」と言うのです。
思考問題が暗記内容に変わる瞬間です。
それを表すかのような意見が次。
こういうのは一見、ただの暗記した内容を超えた思考力を問う良問と映るでしょう。
これはこの種の問題が出された初見時期の生徒らに対しては、そうかもしれません。しかし時がたつと、これらさえも暗記するべき詰め込み内容として塾等では指導することになる。
中学受験を例で考えよう。
中学受験の問題は、「これを解くには発想力・洞察力が必要です」というタイプの問題がキモですが、塾においてはその手の問題や類似問題を数多くこなして、発想力や洞察力が優れていなくても「既知の解き方として覚えた結果解ける」という方法で中学受験に臨むようになってませんか?
「覚えていても、考えなければ解けない」
を超えて、それすらも「覚えておかなければならない」
に変化していきます。
まさにこれです。過去の入試問題の存在で、以後マークしておくべき項目が増えるという場面は良くあります。
それでも、言葉や用語の知識ではなく、文章が答えになるものを問われるのが主流、これを忘れずに受験勉強を展開していただければと思います。
ちなみにブルーベリーの問題の答えが紹介されていなかったのですが、私はこう考えました。
1.狭い室内で育てられる
2.実が小さいので大量に育てられる
3.傷みやすいので、消費量の多い大都市で生産されやすい
1行じゃないじゃん!
どなたか答えをご存じの方は教えてください。
思考力をつけるために親御さんができること
社会に出れば、知っていることはできるけど、知らないことはNGといったことは通用しません。
さらにそれが指示待ち型であれば、迅速な行動がとれないでしょう。
それは社会が求める社会人の姿ではありません。
そのためにも勉強のしかたは、その後のその人の思考系統を作り上げると考えて良いでしょう。
だから、学習は重要です。
それでは、お子さまに思考力をつけるためにはどのようなことができるでしょうか?
それについて紹介します。
お子さまに「なぜ?」と問いかける習慣を持つ
先ほど、昨今の入試問題では、因果関係などを問う問題が増えてきたと言いました。
その因果関係を考える力を身につける方法、それが「なぜ?」と疑問を持つ姿勢を作ることです。
- なぜ勉強をしなければならないのか?
- なぜ学校に校則はあるのか?
- なぜ信号は道に設置されているのか?
- なぜ鉛筆は六角形に切られているのか?
- なぜ東海道新幹線の座席は2人列と3人列とがあるのか?
- なぜ消費税があるのか?
など…
「もし~だったら」という仮定を想定してみる
歴史などで、「もし本能寺の変がなかったらどうなっていた?」「もし太平洋戦争(大東亜戦争)が起きなければ、世界はどうなっていた?」などと、実際に歴史の出来事とならなかったことを想定した世界を考えようとする人がいます。
もちろんそれを考えたところで、世界はその通りにはなるはずもないので、無駄な思考といってしまえばそうなのですが、検証をするという態度としては、非常に貴重な思考であるといえます。
たとえばその「逆の内容のもしも」話を進めていくと論理破綻するとなれば、「だから最初の項目が正しいのだ」という、数学でいうところの「背理法」を行うことになります。
また、それを応用させると、演説や説得、商品紹介の営業に使えます。
「AじゃなくてBだったとしましょう。そしたら○○ってなっちゃうじゃないですか。それはまずいですよね。だからAでなくちゃいけないんですよ」
ということですね。
もうお気づきかと思いますが、これはレトリックな力を生み出します。効果的な表現ができます。
これを小論文や面接に活かせれば、効果的なアピールができます。
まとめ
お子さまの学力を上げるためのひとつの方法として、思考力をつけることが必要です。
物事の因果関係や流れ、物事のシミュレーションの力がつきます。
知識一辺倒の時代は終わりました。教科書の内容を丸覚えし、その枠から出ない間は、学んだことは生きてきません。
お子さまの思考についてよく観察をされ、「考える勉強」を実施してみてください。
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